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2011年11月15日 (火曜日)

物には心がある。 / 田中忠三郎 (アミューズ エデュテインメント)

Photo民俗学の田中忠三郎先生の展示が、現在浅草のAmuse Museumにて行われている。「BORO」と題し、貧農に受け継がれた、つぎはぎの衣類が展示してある。先生が見ているのは、布ではない。その背景にある、人の暮らし・家族・人生である。

http://bit.ly/sKMuNf

  

僕の父方の祖父、じいちゃんの家族は、戦後の混乱期に北海道から東京に上京して来た。子供は僕の父を含めて四人いた。僕が生まれた時、親父の兄妹は一人の妹だけだった。

親父は農民をちょっとバカにしたところがあったから、多分この本に登場する家庭ほど、貧しくなかったかもしれない。しかし、戦後直ぐに生まれ育った北海道の環境は、当時の下北半島とそれほど変わらなかったはずだ。

じいちゃんも、ばあちゃんも、親父も、おばちゃんも、貧しかった時の苦労話はほとんど僕にしなかった。ただ、茶碗の飯は一粒残さず食べろとか、箸を茶碗に立てるなとか、基本的な作法を躾けてくれた。泥臭い戦時の話を、嫁である僕の母が好まなかった。

僕が10代に差しかかるころ、じいちゃんは逝った。僕は少年時代に突入した。年が経つうちに、家族の食卓がなくなっていった。

  

この本には、今痴呆症で施設に入っている祖母の奥にしまい込められた、血と涙と苦労、家族の記憶が記されているように思う。

今、祖母の精神年齢は中学生くらいに戻っていて、戦中・戦後の一家を支えた苦労は、残念ながら表に出てこない。しかし、田中忠三郎が出会った下北半島のお婆さんの話に、記憶に失われたかつての祖母の苦労を思うのである。

物には心がある。次なる世代に引き継ぐものは、物でも財でも、大きな墓でもない。それは、やさしさである、と教えてくれた。

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